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川内原発運転延長は許されない!

⑴原発は他の産業事故とは違う異質の危険がある

 

 福島原発事故の避難者はピーク時の約47万人から減りましたが、12年以上経過した今も約3万1千人にのぼり、福島県からが9割を占めます。東京電力福島第一原発でたまり続ける汚染水を浄化処理した水(処理水)の1日当たりの発生量は94トンといまだ大量に発生しています。

 原発は他の技術にはない「異質の危険」を持っています。ひとたび重大事故を起こし、放射能が外部に流出する事態になると、人類にはそれを制御する手段はなく、被害は、空間的にも、時間的にも、社会的にも、とめどもなく広がります。「人類と原発は共存できない。」このことは福島の現実を体験して、どの世論調査でも原発に否定的な国民が多数であることに表れている。

 これから20年間「基準地震動を超える地震は本当にないのか」「ヒューマンエラーによる重大事故に至ることはないのか」などの不安はつきまとうことになります。どんなに安全対策をしても、100%安全とは言えない原発にエネルギーを依存しなければならない理由はないと言わなければなりません。 

 

⑵「原発は低コスト」は過去のものとなった

 

 龍谷大学の大島堅一教授は、「事故費用を考慮しなくても、原子力発電の国民にとって

の費用は他の電源に比べて高い。」「 使用済燃料再処理によって多額の費用がかかり、今後増大する可能性が高い。」「 バックエンド費用の負担システムがすでにできあがって

いる。」「 事故費用は、これまでの原発からの事業報酬を上回る可能性がでてきた。」と原発は経済的になりたたないと指摘しています。

 毎年、米国での詳細な発電コスト比較を発表している投資アドバイザー会社 Lazard のコスト比較最新版(Lazard 2019)では、

原子力 118 ドル/MWh~152 ドル/MWh

石炭火力  66 ドル/MWh~152 ドル/MWh

太陽光    32 ドル/MWh~44 ドル/MWh

陸上風力は 28 ドル/MWh~54 ドル/MWh

 と試算されています。

 また限界費用(燃料費と人件費を含むメンテナンス費)も試算されており、

原子力 27 ドル/MWh~31 ドル/MWh

石炭 26 ドル/MWh~41 ドル/MWh

風力 6 ドル/MWh~11 ドル/MWh

太陽光 3 ドル/MWh~6 ドル/MWh

 としています。すなわち、原発は新設コストだけではなく、稼働コストでも競争力を失っています。また、日本のように事故費用などを考慮した場合、原発の価格優位性はより低くなります。もはや「安価なエネルギーの原発」は過去のものとなったのです。

 

⑶核燃料サイクルは破綻している

 

  原発で使った核燃料は、敷地内の使用済み核燃料プールに保管されています。日本政府は、使用済み核燃料を再処理して、ウランとプルトニウムを取り出して核燃料として再利用する「核燃料サイクル」の実現を掲げています。

 しかし、青森県六ケ所村の再処理工場は着工から30年たっても26回の本格稼働の失敗で完成の見通しがありません。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていません。「核燃料サイクル」そのものが破綻しています。

 この状況の中で、行き場を失った使用済み核燃料は全国各地の原発敷地内プールでたまり続けています。今年3月時点で、原発を持つ大手電力会社10社のプール容量の8割近くまで埋まっています。プールが満杯になると、核燃料の取り出しができずに、原発は運転できなくなります。川内原発は1号機は11年保てると言いますが、2号機は5年で満杯です。

 中間貯蔵施設についても、政府や電力業界の思惑通りに進んでいません。現在、青森県むつ市で全国唯一の中間貯蔵施設が建設中です。同施設は東京電力と日本原子力発電による共同開発です。20年、大手電力会社でつくる電気事業連合会が同施設を共同利用する案を発表しました。しかし、当時の宮下宗一郎・むつ市長が反対し、頓挫しています。

 原発からでる核のゴミの最終処分場選定をめぐり、第1段階となる文献調査に、北海道の寿都(すっつ)町長が応募し、神恵内(かもえない)村長が国の申し入れを受諾しました。住民や漁協、観光業界などの反対の声を無視したもので、抗議の声が広がっています。周辺の自治体首長や漁協も反対を表明し、鈴木直道・北海道知事は、核のゴミは「受け入れ難い」と定めた道条例の順守を求めています。

 日本学術会議は、最終処分場について「原子力発電をめぐる大局的政策についての合意形成に十分取組まないまま高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別的課題について合意形成を求めるのは、手続き的に逆転」していると指摘しています。

 問われるべきは、核のゴミの発生源である原発をどうするのかということです。核のゴミを増やさないためにも、原発の運転を中止し「原発ゼロ」を実現するよう求めます。

 

⑷再生可能エネルギー普及の障害になっている

 

 再エネは、日本中どの地域にも存在し、潜在量は電力需要の7倍とされています。輸入価格の高騰がエネルギー自給率 10%の日本経済を翻弄していますが、岸田政権は、石炭火力や原発にたよることで、100%国産のエネルギーである再エネを開発・導入できるチャンスを逃しています。

 九州電力が太陽光発電を行っている一部の事業者を対象に発電を一時停止させる「出力制御」を実施したことに、「再生可能エネルギー普及のブレーキになる」との懸念と批判が広がっています。九州電力は、昨年12月から電力の需要を上回る供給があった場合に電力をカットする出力制御の対象をメガソーラーなど大規模事業者に加え、10kw~500kw未満の小規模事業者にまで広げ、約6万発電所を対象にしています。

 JPEA(日本太陽光発電協会)の集計によると、九州エリアでは、2022年度に4億3800万kWh(出力制御率・出力抑制率3.1%)だったのに対し、2023年4月の太陽光に対する抑制量は単月で3億7100万kWh(同26.2%)となり、前年度分に匹敵する量が4月だけで抑制されました。

 原発電力を優先して利用する「優先給電ルール」によって再生可能エネルギー業者からの購入電力を抑えているためです。原発運転延長が、再生エネ普及の妨げにしかならないことはいよいよ明白です。

 

⑸九州電力は、新規制基準を守っていない

 

 「新規制基準」は、福島原発事故の原因究明もないまま、再稼働を急ぐために「スケジュール先にありき」で決定したものです。重大事故(「炉心の著しい損傷」)への対策は部分的で、EUで義務づけているコアキャッチャー(溶融炉心を受け止めて冷やす装置)はなくてもよいとしています。活断層があっても、その真上に原子炉など重要な設備でなければ建設してもよいなど、きわめてずさんなものです。火山対策に至っては、火山学者が無理だと指摘しているのに、原発の運転期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分小さいと判断できると強弁し、「巨大噴火によるリスクは、社会通念上容認される」(設計対応不可能な火山事象に関する原子力規制委員会の「基本的な考え方」2018年3月)と開き直る無責任なものです。

 その最低限の新規制基準も守らない九州電力の姿が明らかになりました。

 今年3月、九州電力がみずから申請した新規制基準に基づく火災防護対象ケーブルの系統分離工事を行っていなかったことが発覚し、安全対策が手抜き工事だったことがわかりました。原子力規制庁の検査官も「今回の問題は、事業者がやると言っていたことがやられていないのでここが問題」と指摘する悪質な行為だと言わなければなりません。

 九州電力は「当社は、福島第一原子力発電所事故から得た教訓を踏まえ、安全性向上に向けた取組みに終わりはないとの強い意志と覚悟を持って、これからも皆さまに安心していただける原子力発電所をめざしてまいります」(九州電力HP)と国民に宣言しておきながら、新規制基準の基づく設工認申請通りの工事を行っていなかったことに対して、国民に謝罪をしておらず「安全神話」が再び復活していると言わざるを得ません。きびしく指摘し九州電力の謝罪と説明を求めるものです。

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